★あさぎり通信vol.21 死亡保険金を受け取った場合の相続税の非課税制度の誤解

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

今回も相続税関係の話です。

死亡保険金を受け取った場合の相続税の非課税制度ですが、中途半端な理解だと痛い目に合うという内容です。

制度の概要と実際にあった事例で説明します。

本日のテーマ

死亡保険金を受け取った場合の相続税の非課税制度の誤解

 

概要

まず、この死亡保険金の相続税の非課税制度の概要は次の通りです。

被相続人(亡くなった人)の死亡によって取得した生命保険金等で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。

この死亡保険金の受取人が相続人である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

 非課税限度額=500万円×法定相続人の数

保険金の受取人が相続人の場合には、上記計算式の非課税限度額まで非課税という事です。                         

ポイントは受取人が相続人で、逆に、相続人以外の者が貰う場合には非課税になりません。

 では、実際にあった、具体例(失敗例)を反面教師にして下さい!

具体例(失敗例)

<前提条件>

○ 相続人、子1人

○ 被相続人(父)の死亡時の財産2500万円

死亡保険金1,500万円:受取人孫3人が各500万円

○ その他孫3人に毎年100万円づつ贈与していた

基礎控除額は、相続人1人なので3,600万円

以上のようなケ-スで相続税はどうなるでしょうか?

答えは、

総財産=2,500万円(死亡時の財産)

+1,500万円(死亡保険金)

+100万円×3人×3年(相続開始前3年以内の贈与の為、相続財産に加算)

=4,900万円

相続税=(4,900万円-3,600万円)×15%-50万円=145万円

 相談者は、愕然としていました。

 死亡保険金は1人500万円まで、今回は受取人が3人なので1,500万円まで非課税じゃないの!

 贈与財産の加算って何!?

今回のケ-スでは、

死亡保険金は、1人500万円まで非課税になると勘違いしていた。孫3人で貰っているのだから500万円×3人の1,500万円までは非課税、つまり、基礎控除額以下なので税金がかからないと・・・思っていた様ですが・・・

NO!NO!ですよ

相続人が受け取った場合にだけ、非課税限度額があるのです。

孫は相続人じゃないですよね!だから非課税になりません。

ここに、大きな落とし穴、勘違いがあった様です。

更に、悪いことが重なり、孫3人が保険金を受け取った為、孫が、遺贈により財産を取得した事になり、相続開始前3年以内に受けた贈与財産を、相続財産に加算しなければいけなくなりました。

詳しい内容は、VOL.20を参照して下さい。

何とかしてよと言われましたが、何ともなりません。

また、保険契約した時は、相続税の基礎控除額が6,000万円あったので安心していたのかもしれません。

今回のケ-スでは、保険金の受取人を単純に孫から子に変更しておけば良かっただけなのですがね!

 そうすれば、

総財産=2,500万円(死亡時の財産)

+1,500万円-500万円(保険金の非課税)

=3,500万円

となり、基礎控除額以下となり、相続税は0円です。

 ・・・・何とも、後の祭り・・・

編集後記

これまで、何度もお伝えしていますが、税法・法律はチャント理解しなければいけません。

今回の話は、第一に、死亡保険金は1人500万円までが非課税だという、中途半端な理解が敗因です。また、相続税の基礎控除額が大幅に下がった事もあります。

相続税の基礎控除額が下がった現状では、この死亡保険金の非課税制度は、節税対策としては絶対に外せない制度です。

今後、生命保険に加入を検討される方は、受取人には注意して下さい。

既に、生命保険に加入されている方、又、保険会社の方は、この機会に、受取人の確認を行い、今回の様なケ-スになっている場合には受取人の変更をする様にしましょう。