★あさぎり通信vol.26 後で税務トラブルにならない贈与の方法

 あさぎり会計事務所の税理士の山根です

vol.24で、相続税の基礎控除額の引き下げにより相続税の対象者が増えて行くので

効果的・計画的に贈与を行い、相続税の節税を図って行きましょうという話をしました。

 ここで、問題なのが贈与したつもりケ-スです!!

 今回のテーマは贈与したつもりで、後で贈与自体が否認され税務トラブルにならない様にする為の贈与の方法です。

 

概要

 前提として、贈与とは、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)との二者間の契約行為で、

「あげます」「もらいます」のお互いの意思表示が伴って成立するものです。

贈与成立の為の最大のポイントは意思表示能力です。

 例えば、認知症等で意思能力等がない場合には、贈与は成立しないので認められません。

税務署は、病歴・看護履歴等などで、意思能力があったかどうかを確認する場合があります!!

このお互いの意思表示を形にしたものが贈与契約書です。

 更に、贈与契約書作成のポイントは、お互いに署名して作成する事です。

記名だと、意思能力の確認資料としては弱くなるからです。

署名すれば、当人同士の意思表示の証明になり、更に、当人の意思能力があった事の証明にもなります。

 次に、預金の贈与の場合には、振込にして通帳間の履歴を残しましょう。

ただし、これだけでは形式上に過ぎず、実質・実体が重要となります。

 受贈者(もらった人)が、必ず印鑑・通帳の管理を行いましょう!

 

あの子は、金遣いが荒いから、通帳と印鑑は私が持っておく・・・

 

 というケースがよくありますが、これだと実質的にあげていないので贈与として認められません!!

 あげたら諦めて下さい・・・・ 

以下ポイントをまとめておきます。

 

〇 お互いの署名による贈与契約書の作成(確定日付があると完璧)

確定日付とは、公証人役場で押印してくれるもので、その日に、その契約書が存在していた事を証明するものです。ちなみに、手数料は一通700円です。下記の通帳間の履歴が残っていれば特に必要ないですが、現金の贈与の場合には、あった方がいいでしょう。

〇 贈与者の通帳から受贈者の通帳に振込をし、履歴を残す

〇 受贈者が、通帳、印鑑を管理する(贈与者と同じ印鑑はNG)

尚、年間の贈与金額の累計額(もらった人の累計額)が110万円を超えると贈与税の申告が必要となります。

 

贈与税の時効について

(時効について) 

「贈与税に時効ってあるの?」と良く聞かれます!!

贈与税の時効は6年です。

ただし、虚偽申告その他不正の手段により贈与税の申告を免れた場合には、7年となります。

お金等を貰って無申告というのは、明らかに故意・虚偽なので7年となります。

したがって、贈与税の時効は7年と覚えておくといいでしょう!!

ちなみに、贈与について、税務署はいちいち把握なんか出来ません。

マイナンバ-制度が確立すれば別かもしれませんが、現状、個人間の預金の移動なんで分かりません!

では、どこで、発覚するかというと、相続発生後の相続税の税務調査の時や、贈与(お金移動)後に不動産等の高額物件を購入した時などです。

 

(時効が認められる場合)

結論から言うと、時効が過ぎて課税されずに済むというケ-スは稀です。

財産が移転した場合には、法人税、所得税、相続税、贈与税等の何らかの税金が課税されるのが大原則です。

そうしなければ課税の公平性が保たれないし、何より税務署はそこまで甘くないです!!

相続発生後の申告書作成時に、被相続人(亡くなった人)の通帳の履歴の確認をしていると、大きなお金が動いているので、相続人に、「このお金がどうなったかご存知ですか?」と尋ねると、

「あ~私が貰いました。でも、7年以上経っているから贈与税は時効よね!!もう税金払わんでいいよね!!

と、誇らしげに聞いてくる方がいます。

この様なケ-スの多くは名義預金に認定され、相続財産として課税されます。

名義預金とは、形式的には名義が、妻や子などになっているが、収入等から考えれば、実質的に真の所有者がいる。つまり、親族に単に名義を変えているだけの様な預金をいいます。

名義預金として認定されると、真の所有者は、亡くなった人となるので、贈与にはなりません!!

贈与にならなければ、必然的に10年経とうが20年経とうが時効にはならず、相続財産に加算され追徴税額を払わなければなりません!!

そうなったとき、「これは私の財産よ!贈与でもらったんだから!」と反論したくなりますが、上記の概要で書いた通り、贈与の要件を総合的に勘案して判断されますので、ほとんどのケースで贈与として認められる事はありません。

 契約書もない、申告もしていないのに認めてもらうのは無理でしょう・・・

尚、理論的には、贈与契約書を確定日付入りで作成し、財産の管理・運用も受贈者(貰った人)が行い、贈与税の申告を無申告(脱税)でドキドキしながら7年間過ごしたら、贈与税が時効になる可能性は高いかもしれません・・・

ただ、明らかに脱税行為だし、7年の間に相続が発生するかもしれません・・・

以上から、明らかに名義預金の場合には贈与は成立しませんが、贈与の意思があったのに、契約書や実体の不備等で贈与を否認されるケ-スだけは絶対に避けましょう。

 

編集後記

今回の話はどうでしたか?

相続税の申告をした後、税務調査が入る割合は約30%です。

そして、税務調査で指摘される事項で最も多いのが、名義預金を含めた金融資産です。

後でトラブルにならない様に、面倒でも今回お伝えした方法を実践して下さい。