★あさぎり通信vol.35 養子縁組について その2

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

さて、本日のテーマですが、前回(vol.34)掲載した「養子縁組」の話の続きです。

前回の掲載は制度の概要説明程度に終わってしまいましたが、今回は事例等も交え実践的な内容となっています。前回の内容を復習して読んでいただくと良いと思います。

養子縁組によるメリット・デメリット

(養子縁組によるメリット)

相続税の節税

基礎控除額が増える

相続税の総額が減る(累進税率の緩和)

生命保険・退職金の非課税枠が増える

(注)ただし、相続税の計算上、実子が居る場合には養子の数は1人しか認められない

不動産取得税が非課税

特定遺贈(相続人以外の人に遺言書で遺産を渡す事)による移転だと課税されるものが、孫等が養子縁組後に、相続人として相続すると非課税となります。

登録免許税の軽減

特定遺贈による財産の移転よりも、孫等が養子縁組後に、相続人として相続すると登録免許税が軽減されます。

特定遺贈の場合の税率20/1000

相続の場合の税率4/1000

その差5倍です!!

遺留分対策

これは、遺留分減殺請求を受ける側の防衛の話です。

遺留分の減殺請求、つまり相手方に遺留分相当額の渡す財産金額は、亡くなった人の全財産(過去の贈与した財産も含む)の法定相続分の1/2となります。

養子縁組で相続人の頭数を増やしておけば、相手方に渡す金額は減る為、遺留分対策となるわけです。

(養子縁組によるデメリット)

遺産分割がまとまらない可能性がある

税金の節税・遺留分対策といっても、相続人が増える為、遺産分割がまとまらなければ本末転倒

孫養子の場合には相続税が2割増

孫養子が相続により財産を取得した場合には、その財産を取得した孫の支払う相続税額は2割加算つまり1.2倍となります。

ただし短期的には、確実に損ですが、一代飛ばしての相続になるので長期的にみれば有利になる場合もあります。

離婚しても子供!

孫養子に相続させると相続税が高くなるという理由で、長男の嫁を養子にするケ-スも多くあります。

長男と嫁は離婚すると他人ですが、養親との間では親子関係のままです。

という事は、当然、離婚した嫁にも相続権がありますよね!!

実務上の留意点

意思能力にはご注意を

被相続人が認知症等で意思能力が無い場合にはOUTです!

手軽な故に、いつでも出来ると思い、なかなか手続きを行わないんです!!相続直前になって慌てない様に早目に手続きしましょう!!

養親は1人だけでも可能

実際に実務であった冷や汗ものの、結果オーライだっだ話です。

ちなみに私のお客さんは、今回の登場人物上で言えば弟さんです。

話の概要は以下のとおりです。

・家族構成は夫婦と子供2人(長男・次男)

・父親の相続税対策の為に、長男の嫁と養子縁組をする

・あくまでも相続税対策なので長男の嫁は財産を相続しない

・父死亡時に、母だけが相続し、養子縁組のおかげで、頭数が増え、相続税の節税は成功

・父の死亡後、急激に兄弟仲&嫁同士の仲が悪くなる

・その後、母親が死亡

・弟は、母親の遺産について1/3しか貰えない事を覚悟、兄1/3、兄嫁1/3、自分が1/3つまり兄方2/3、弟方1/3

ところが戸籍を確認すると父親と長男の嫁だけの養子縁組でした!

という事は母親と長男の嫁は他人、つまり長男の嫁に相続権なし

天国のお父さんありがとう・・・という結末でした。

実は、昭和62年の民法改正によって概要(vol.34)にも書きましたが、成年者を養子にする時には、夫婦揃って養親にならなくてもよいと変わりました。

今回のケースは、父親がそこまで想定して、自分だけが養親になる養子縁組をしたのかは不明ですが結果的に助かりました。

また、今回のケースとは逆に、兄弟仲が良く、母親が亡くなった時にも当然に、兄の嫁が養子になっているものだと思い、相続税等を考えていたら大きく狂いますね!!

この様に民法改正前と後では、養親の取扱いが違うので、既に養子縁組をしている方は、養親が誰になっているか必ず確認しましょう。

この最後の話は本やネットで見た事がないのでぜひ参考にして下さいね!

ちなみに私は、養子縁組は必ず夫婦揃ってするものだと思い込んでいました。

思い込みはよくないですね!恐いですね!

編集後記

今回の話は実際にあった話です。

何事もそうですが思い込みは怖いですね!

今回の件もそうですが、相続対策を行う時には、各専門家と多角的に協議して進めないと思わぬ落とし穴があるかもしれません。