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★あさぎり通信vol.31 贈与に関する都市伝説・誤解その3

おはようございます。

あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

さて、本日のテ-マですが、前回・前々回で掲載している贈与に関する内容の最終編です。

内容としては、今回の件も良く聞かれる事ですが、

毎年贈与する金額や日にちは変えた方が良いのか?

今回の内容も、前回・前々回同様、都市伝説や誤解、人によって言う事が違ったりするので、またまた私を信じて最後まで読んで活用して下さい!

概要

 「毎年、贈与する金額や日にちは変えた方がいいですか~?」という質問も、前回、前々回の内容と同様に良く聞かれます。

結論からいうと、金額や日付を変えた方がいい でしょうね!

理由は、前回の考えと同じですが、その方が、税務署からの指摘を受ける可能性が減りやすいからです。

法律論的に良い悪いではなく、実務上の対応を考慮しての話です。

では、法律論的にどうかというと、毎年の贈与金額や日付が同じであっても、今まで何度もお話した様に、贈与が成立する為の要件(詳しくはVOL26参照)を具備していれば否認される事はありません

でも、税務署との対応は面倒くさいですよね!という話です。

では、何故こんな話が出回っているのでしょうか??

毎年同じ金額や日付で贈与すると連年贈与になるという都市伝説があるからです。

連年贈与

連年贈与とは、毎年同じ金額の贈与を繰り返すと、その合計額を贈与とみなして、まとめて贈与税が課税されるというものです。

毎年100万円の贈与を10年間繰り返していると、最初の年に1,000万円を贈与したものとみなされて贈与税が課税されてしまう!という事です。

よくある具体例で言うと、

10年払いの保険に入る為に、毎年、同額の保険料相当額を父から子に贈与する。この場合に10年分の保険料相当額の合計額に贈与税が課税されるという都市伝説です。

この都市伝説の出処は、国税庁のHPのNO.4402に以下の様な記載があるからだと思われます。

毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合 (国税庁HP:NO4402)

Q1

親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。

A1

各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。

(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)

以上が国税庁のHPですが、

ここでポイントなのが、上記太字の部分ですが、 「10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合」

最初から1,000万円を10年に分割して贈与するという契約であれば、毎年の贈与金額は関係ない。                                         つまり、1,000万円に対して贈与税を課税するという事です。

最初から1,000万円が確定しているケ-スです。

したがって、毎年100万円の贈与を10年間続けたのでは、結果の合計額が1,000万円で同じでも意味が全く違います!

税務署が、もし、連年贈与で否認するのであれば、初めから「1,000万円を10年で分割して贈与する」というような契約書を探してこなければ無理です。

だから、毎年の贈与に対して契約書を作成しておけば問題にはならないんです!!

連年贈与になんてなるわけがありません!

以上、連年贈与の考え方を理解して下さいね !

編集後記

今回の話はどうでしたか?

前回同様、連年贈与の意味を理解していれば、毎年、同額の贈与する事については何も怖くないのですが、税務署に何か言われると嫌ですよね!

だから、贈与金額や日付は変えた方がいいかもしれませんね。

また、前回の話ですが贈与税も毎年払った方が無難ですね!

★あさぎり通信vol.30 贈与に関する都市伝説・誤解その2

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

さて、本日のテ-マですが前回・前々回の私のパ-トで掲載している贈与に関する内容の続きです。

内容としては、お客様から良く聞かれる事なのですが、

1. 未成年者(赤ちゃん)に対する贈与は大丈夫なのか?(vol.29参照

2. 贈与する金額は110万円以上にして、証拠の為に贈与税は払った方がいいのか?

3. 毎年贈与する金額や日にちは変えた方が良いのか?(次回掲載予定)

以上の3点ですが、今回は2について解説しようと思います。

今回も1と同様、本やネットで検索すると非常に多くヒットする内容です。

都市伝説や誤解、又、人によって言う事が違ったりするので、私を信じて最後まで読んで活用して下さいね!

概要

「贈与する時には、贈与金額を110万円以上にして、贈与税は申告しておいた方がいいんですか~?」

この話は良く聞きませんか~?私も実際に良く質問されます。

結論から言うと、贈与の金額を110万円以上にして贈与税は払った方がいいでしょうね

何故なら、贈与税の申告が出ていれば、税務署からの指摘を受ける可能性が減りやすいからです

疑われずして素通りして行く可能性が高いという事です。

実際の税務調査の現場では、家族間の資金交流について、調査官から

「これとこれは贈与税の申告がされているので分かりますが、その他の動きについてはどうなっているのか分からないので説明してもらえますか?」というケ-スが多いです。

何度も解説していますが、贈与成立の為には、

〇 当事者間の意思があったかを担保する為の契約書の有無

〇 実体として贈与により財産をもらった人が、その財産を自分のものとして管理・保管しているか

などの要件が絶対に必要です。

勿論、以上の様に完璧に贈与成立の要件を満たしていれば、110万円以内の贈与であっても、何も問題はありませんから、びた一文税金を払うのが嫌な方は、申告など行う必要はありませんが・・・・

ただ、税務署に説明するのは面倒だし、因縁をつけられたら嫌ですよね!

贈与税の申告書が出ていれば素通りする可能性が高いから、税務署との応対が減りやすく、気も心も楽じゃないですか! 

という理屈です。

注意点

逆に、気を付けなければならないのが、贈与税の申告をしていれば、後で問題が起こらないと思っている方です。

贈与税の申告=贈与成立では決してありません!

都市伝説であり大きな誤りです!

 贈与税の申告は、贈与成立を立証する為の1つの証拠にしか過ぎません

具体的に下記の様なケ-スがよくあるパタ-ンじゃないでしょうか。

(1) 贈与者(財産をあげる人)が、受贈者(財産をもらう人)の通帳にお金を振替、通帳は渡さずに、贈与者が贈与税の申告を行い、贈与税も支払う。

(例)おじいちゃんが孫名義の通帳を作って、そこに振込、通帳自体は、孫や孫の親には渡さず、その後、おじいちゃんが贈与税の申告を行い、贈与税も自分で支払う。

(2)受贈者が贈与者のお金を通帳から引き出し、自分の通帳に振替、受贈者が贈与税の申告を行い、贈与税も支払う。

(例)認知症の親の通帳から、お金を引き出し、自分(子)の通帳に振替、その後、贈与税の申告を行い、贈与税も自分で支払う。

申告しているから大丈夫だと思ったら絶対にNGです!!

余談ですが、上記(2)の場合には、遺産分割の際に他の相続人からも、勝手にお金を流用しているので指摘を受ける可能性大です!!

裁決事例(H22.4.1)でも、贈与税の申告がされていても否認されています。

また、私見ですが、どうせ申告するのなら、贈与金額を120万円以上にして1万円以上の贈与税は払った方がいい様な気がします!

100円か200円の贈与税だと公証人役場の確定日付の手数料よりも安い!!

私が税務調査官だったら逆に、こいつ、あからさまに証拠作りの為に、税務署を利用して申告したなと思います。

そうなると、本当に贈与が成立しているのか、ちょっと実体の調査でもしてみよう、なんて気にさせそうです。

編集後記

今回の話も都市伝説で誤解されている方が多い内容だと思います。

きちんと贈与の手続きをしていれば、課税トラブル(否認)になる事はありません

 ただ、税務署に何か言われるのは面倒ですよね!嫌ですよね!

だから、贈与税の申告をした方が楽じゃないでしょうかね。

★あさぎり通信vol.29 贈与に関する都市伝説・誤解その1

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

さて、本日のテ-マですが、前回、前々回の私のパ-トで掲載している贈与に関する内容の続きです。

内容としては、お客様から良く聞かれる事なのですが、

○ 未成年者(赤ちゃん)に対する贈与は大丈夫なのか?

○ 贈与は110万円以上にして贈与税は証拠の為、払った方がいいのか?

○ 毎年贈与する金額は変えた方がいいのか?

以上の3点ですが、今回は、「未成年者に対する贈与」について解説しようと思います。

都市伝説や誤解されている方も多いと思いますので最後まで読んでくださいね!

概要

未成年者に対する贈与が大丈夫かどうかなのですが、まず、贈与契約は民法で定められていますが、民法上、贈与に「年齢制限」は定められていません。

したがって、0歳の赤ちゃんだろうと、小学生だろうと、大学生だろうと未成年者に対する贈与は法律上有効です。

ここで、よくある話なのですが、

書籍や税理士によっては、未成年者でも、ある程度自分で判断が出来る年齢(小学校の高学年以上)でないと、贈与は成立しない!!というところも。

何故なら、贈与は、贈与者と受贈者の二者の意思疎通があって成立するという大原則があるので、自己の判断能力のない未成年者だと、この意思疎通が出来ないから駄目、贈与は成立しない、という理由の様ですが・・・・

こういう記事があるから皆さん迷ってしまうんでしょうね!!

最近、信託銀行が窓口になって流行っている「教育資金の一括贈与」という制度があります。この制度を利用して赤ちゃんに対して贈与するケ-スは非常に多い様です。

先程の判断能力のない未成年者に対する贈与は成立しないという方は、この事実をどう説明するんでしょうかね??聞いてみたいです!!

国が推進している、「教育資金の一括贈与」だから、有効で、個人的に行った贈与は無効とでも言うのでしょうか!!そんな馬鹿な話はありません。

又、過去の裁決事例(H19.6.26)でも、

未成年の子が贈与の事実を知っていたかどうかに関わらず、親が未成年者である子の法定代理人となる事で贈与は成立するとなっています。

貰う本人が贈与の事実を知らなくても有効と言っています!! 

以上から、赤ちゃん等の判断能力のない未成年者に対する贈与も問題ないと考えられます。

注意点

贈与全般に言える事なのですが、贈与を成立させる為には、形式と実体には、注意して下さいね。

具体的には、vol.26(2017.12.13投稿)を読み返して欲しいのですが、先ず、贈与契約書には必ず「親権者」が署名する様にして下さい。民法上、未成年者は、法律行為における判断能力が不十分である為、親権者の同意が無ければ、法律行為が成立しないからです。

次に、実体ですが、贈与により取得した財産の管理等も親権者が行う事になるのですが、使い込みは厳禁です。

「教育資金の一括贈与」は、信託銀行が、契約書から管理まで全て行うので問題が出ないのでしょうが、個人間で贈与する場合にも、これと同じようなレベルで処理する事が望ましいのは言うまでもありません!

編集後記

相続税増税になった今、節税対策として贈与は必須となっています。未成年者等の孫への贈与をしていけば、多額の財産移転が可能となります。

また、原則、孫に対する贈与は、相続が発生した場合にも、持ち戻しの対象(相続開始前3年以内の贈与)にならないので、節税対策としては有効です。

ただし、何度も言いますが後で税務トラブルにならない処理を行いましょう。

★あさぎり通信vol.28 不動産取得税の落とし穴(内装工事)

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の藤田です。

今回のテーマは、「賃借人であるテナントが内装工事をした場合に、賃貸人であるオーナーに不動産取得税が課税される可能性がある」という話です。

え!?賃借人が行った内装工事について、オーナー自ら不動産取得税を支払わないといけないの!!?

オーナーにしてみれば、何も取得していないのに、税金を支払わないといけないの!!!?

何か変だと思いませんか?

概要

 不動産取得税は、不動産を取得又は新築した場合に、不動産を取得又は新築した人が納付する税金です。この税金は、広島県が、税額を計算して課税します。つまり、自ら申告をしなくても課税される税金です。不動産を取得、新築された方は、分かるかもしれませんね。

不動産を取得、新築した場合に、不動産取得税が課税されるのは、理解ができると思います。が、今回のテーマは、賃借人が行った内装工事にも不動産取得税が課税される話です。(オーナーが内装工事をしていないものです。)

地方税法73条の2第6項において、「家屋が建築された場合において、・・・・一体となって家屋として効用を果たしているものについては、・・・・取得者以外の者が取り付けたものであっても・・・・不動産取得税を課することができる」 つまり、「課することができる」と地方税法でははっきり記載されています。ただし、「できる」規定なので、このままだと課税はされないです。

この地方税法に基づき、広島県では、条例を定め「課することができる」規定を「課する」に定めています。

 広島県条例第56条7

「家屋が建築された場合において、・・・・一体となって家屋として効用を果たしているものについては、・・・・取得者以外の者が取り付けたものであっても・・・・不動産取得税を課する。」

つまり、広島県においては、賃借人が行った内装工事については、不動産取得税を納付しなければなりません。

この規定においては、新築物件、中古物件、事業用物件、居住用物件の区分がされていない為、すべてが課税の対象になります。

 どのような内装工事が課税されるのか

内装工事でも、修繕みたいな内装工事には課税されません。地方税法では、「一体となって家屋として効用を果たしているもの」と定めており、広島県では「固定資産税評価基準において家屋に含まれるもの」取通(県)五章二(2)ア)と規定しています。

例えば、空調設備、パーテーション、コンセントの数、洗面台、床工事、天井の工事などです。一般的に賃借人がスケルトン(何もない状態)で賃借した場合に、行う内装工事が対象です。

 この不動産取得税の納税義務者は誰なのか

地方税法では、この不動産取得税の納税義務者は、「主体構造物の取得者」と定めています。つまり、建物の所有者です。また、地方税法では、建物の所有者が、賃借人と協議をして、賃借人に課税することができるとも定めています。

不動産取得税の納税をめぐるトラブルの解決方法

<賃貸人の立場>

不動産取得税をオーナーが支払うのか、内装工事をしたテナントが支払うのか事前に決めておかないとオーナーが不動産取得税を支払わなければいけなくなるリスクがあります。

このリスクを避けるために、賃貸借契約書で不動産取得税が課税された場合には、賃借人が納付すると定めておくことが大切です。

算出された不動産取得税の額については、正しい金額か確認する必要はあります。

<賃借人の立場>

地方税法、広島県の条例においても、賃借人は納付する義務がありません。地方税法では、「賃貸人と賃借人が協議の上、賃借人に課税することができる。」と記載しているだけなので、協議して合意しなければ、不動産取得税の納付義務がありません

ひょっとしたら、新築物件のテナントで、テナント側には本来支払い義務がないにもかかわらず、不動産取得税を納付された方がいるかもしれませんね。

編集後記

不動産取得税は、広島県が税額を確定して納付書を作成して通知してくる税金です。この為、何の疑問も思うことなく納付してしまっているのではないかと思います。

 私見ですが、中古の物件の場合、賃借人が行った内装工事について納付義務があるが、ほとんどのケースで広島県は、課税していない。つまり、不動産オーナーは不動産取得税を納付していないのが、実態ではないかと思います。

広島県の担当職員が新築物件のみ目をとがらして課税しているのではないかと思います。

このような、課税の決定は、課税の公平性に欠けるのではないですかね。

★あさぎり通信vol.27 親名義の建物に子供がリフォームをした場合の...

おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の藤田です。

今回のテーマは、親名義の建物に子供がリフォームをして住む場合の税金の話です。

えっ、親名義の建物に自分がリフォームして住むのに税金がかかるの?

何か、変ですね!!

概要

まず、親名義の建物に子供が増築した場合の税務の取扱いとして、国税庁のホームページに、「親名義の建物に子供が増築したとき」の題で下記の様な記載があります。

「子供が親名義の建物に増築した場合には、親が子供に対価を支払わないときは、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。しかし、増築資金に相当する建物の持ち分を子供へ移転させて共有にすれば、贈与税は課税されません。ただし、親から子供への建物の持分の移転は、親から子供への譲渡となり譲渡所得税が課税されます。」

つまり、国税庁は、親名義の建物に子供が増築をした場合には、親が贈与税を支払うか、譲渡所得税を支払うかどちらかになると記載しています

国税庁の見解の根拠としては、民法242条に「付合」という概念があるためです。「付合」って、聞きなれない言葉ですが、つまり、他人が建物の増築などをした場合において、所有権は、建物の本体の所有者に帰属するという考えです。

本当に、親が持っている建物に自分が住む為に増築した場合に税金がかかるの?

何かおかしいのではないか?そう思いませんか?

私は、税理士としておかしいと思います!!!

対策方法

親名義の建物に子供が住む為に自らリフォームをする場合の税金の解決方法として、下記にまとめました。

1.親が贈与税を支払う。

前提→何もしない場合(持分の移転をしない)

国税庁の見解の通りに親が子供から「増築資金相当額の利益」を受けたものとして贈与税を支払う。

問題点→贈与により受けた利益をどのようして評価するのか。上記の国税庁のホームページにも記載がありますが、贈与を受けた利益は、増築にかかったお金ではなく、「増築資金相当額の利益」と記載しています。いくら利益を受けたのか評価が難しいですね。

解決方法→贈与税が高くなるかもしれませんが、増築にかかったお金で贈与税を申告すれば問題は生じないのではないかと思います。

2.親が譲渡所得税を支払うか、子供が贈与税を支払う。

前提→リフォームの前に建物の持分全部を子供に売買か贈与で所有権を移転しておく。

そもそも他人名義の建物にリフォームをするので、このような難しい問題が生じます。あらかじめ、所有権を全部移転しておけば、このような問題は生じません。

ただし、譲渡所得税か贈与税の負担が生じます。

3.贈与税も譲渡所得税も支払わない。

前提→法解釈を正しく理解できる税理士にお願いをする。(あさぎり会計事務所など)

インターネットでこのテーマについて検索すると、税理士としての考えとして贈与税か譲渡所得税が課税されると書かれていることが多いです。この理由としては、国税庁のホームページに記載があるからだと思います。

税理士として、見解がわかれる分野かもしれません。具体的な個別案件にもよりますが、贈与税、譲渡所得税も課税されない方法で処理することもできます。

あさぎり会計事務所では、実際に税務署と折衝し、この方法で処理しています。

ただ、専門家でない方が、この方法をとるのは難しいかもしれませんね!!

編集後記

今回のテーマは、税務上の解釈の難しい内容になっています。

税理士によっても考えが違うかもしれません。

また、今回のテーマ以外にも「ある取引」について、税務判断が確定できない、又は税理士によっても判断が違うこともあります。気になることがありましたら、セカンドオピニオンとして相談して頂ければと思います。

★あさぎり通信vol.26 後で税務トラブルにならない贈与の方法

 あさぎり会計事務所の税理士の山根です

vol.24で、相続税の基礎控除額の引き下げにより相続税の対象者が増えて行くので

効果的・計画的に贈与を行い、相続税の節税を図って行きましょうという話をしました。

 ここで、問題なのが贈与したつもりケ-スです!!

 今回のテーマは贈与したつもりで、後で贈与自体が否認され税務トラブルにならない様にする為の贈与の方法です。

 

概要

 前提として、贈与とは、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)との二者間の契約行為で、

「あげます」「もらいます」のお互いの意思表示が伴って成立するものです。

贈与成立の為の最大のポイントは意思表示能力です。

 例えば、認知症等で意思能力等がない場合には、贈与は成立しないので認められません。

税務署は、病歴・看護履歴等などで、意思能力があったかどうかを確認する場合があります!!

このお互いの意思表示を形にしたものが贈与契約書です。

 更に、贈与契約書作成のポイントは、お互いに署名して作成する事です。

記名だと、意思能力の確認資料としては弱くなるからです。

署名すれば、当人同士の意思表示の証明になり、更に、当人の意思能力があった事の証明にもなります。

 次に、預金の贈与の場合には、振込にして通帳間の履歴を残しましょう。

ただし、これだけでは形式上に過ぎず、実質・実体が重要となります。

 受贈者(もらった人)が、必ず印鑑・通帳の管理を行いましょう!

 

あの子は、金遣いが荒いから、通帳と印鑑は私が持っておく・・・

 

 というケースがよくありますが、これだと実質的にあげていないので贈与として認められません!!

 あげたら諦めて下さい・・・・ 

以下ポイントをまとめておきます。

 

〇 お互いの署名による贈与契約書の作成(確定日付があると完璧)

確定日付とは、公証人役場で押印してくれるもので、その日に、その契約書が存在していた事を証明するものです。ちなみに、手数料は一通700円です。下記の通帳間の履歴が残っていれば特に必要ないですが、現金の贈与の場合には、あった方がいいでしょう。

〇 贈与者の通帳から受贈者の通帳に振込をし、履歴を残す

〇 受贈者が、通帳、印鑑を管理する(贈与者と同じ印鑑はNG)

尚、年間の贈与金額の累計額(もらった人の累計額)が110万円を超えると贈与税の申告が必要となります。

 

贈与税の時効について

(時効について) 

「贈与税に時効ってあるの?」と良く聞かれます!!

贈与税の時効は6年です。

ただし、虚偽申告その他不正の手段により贈与税の申告を免れた場合には、7年となります。

お金等を貰って無申告というのは、明らかに故意・虚偽なので7年となります。

したがって、贈与税の時効は7年と覚えておくといいでしょう!!

ちなみに、贈与について、税務署はいちいち把握なんか出来ません。

マイナンバ-制度が確立すれば別かもしれませんが、現状、個人間の預金の移動なんで分かりません!

では、どこで、発覚するかというと、相続発生後の相続税の税務調査の時や、贈与(お金移動)後に不動産等の高額物件を購入した時などです。

 

(時効が認められる場合)

結論から言うと、時効が過ぎて課税されずに済むというケ-スは稀です。

財産が移転した場合には、法人税、所得税、相続税、贈与税等の何らかの税金が課税されるのが大原則です。

そうしなければ課税の公平性が保たれないし、何より税務署はそこまで甘くないです!!

相続発生後の申告書作成時に、被相続人(亡くなった人)の通帳の履歴の確認をしていると、大きなお金が動いているので、相続人に、「このお金がどうなったかご存知ですか?」と尋ねると、

「あ~私が貰いました。でも、7年以上経っているから贈与税は時効よね!!もう税金払わんでいいよね!!

と、誇らしげに聞いてくる方がいます。

この様なケ-スの多くは名義預金に認定され、相続財産として課税されます。

名義預金とは、形式的には名義が、妻や子などになっているが、収入等から考えれば、実質的に真の所有者がいる。つまり、親族に単に名義を変えているだけの様な預金をいいます。

名義預金として認定されると、真の所有者は、亡くなった人となるので、贈与にはなりません!!

贈与にならなければ、必然的に10年経とうが20年経とうが時効にはならず、相続財産に加算され追徴税額を払わなければなりません!!

そうなったとき、「これは私の財産よ!贈与でもらったんだから!」と反論したくなりますが、上記の概要で書いた通り、贈与の要件を総合的に勘案して判断されますので、ほとんどのケースで贈与として認められる事はありません。

 契約書もない、申告もしていないのに認めてもらうのは無理でしょう・・・

尚、理論的には、贈与契約書を確定日付入りで作成し、財産の管理・運用も受贈者(貰った人)が行い、贈与税の申告を無申告(脱税)でドキドキしながら7年間過ごしたら、贈与税が時効になる可能性は高いかもしれません・・・

ただ、明らかに脱税行為だし、7年の間に相続が発生するかもしれません・・・

以上から、明らかに名義預金の場合には贈与は成立しませんが、贈与の意思があったのに、契約書や実体の不備等で贈与を否認されるケ-スだけは絶対に避けましょう。

 

編集後記

今回の話はどうでしたか?

相続税の申告をした後、税務調査が入る割合は約30%です。

そして、税務調査で指摘される事項で最も多いのが、名義預金を含めた金融資産です。

後でトラブルにならない様に、面倒でも今回お伝えした方法を実践して下さい。

★あさぎり通信vol.25 様々な譲渡所得について

 あさぎり会計事務所の税理士の藤田です

確定申告の時期が近づいてきました。

今回は、知っておきたい確定申告の譲渡所得についての話です。

 

概要

譲渡を行った場合、誰が何を譲渡したかによって申告の仕方が変わります。

様々な譲渡の事例を下記にまとめてみました。

該当する方は少ないかと思いますが、該当しない方も、

所得税は複雑だな、と知って頂ければと思います。

 

具体例

<不動産の場合>(個人事業者を含む全ての人)
事業用、居住用関係なく分離課税の譲渡所得として申告が必要です。

不動産の譲渡の場合には、様々な特別控除や、税額控除等の制度があり複雑です。

※ただし不動産事業者の商品は除く

 

<生活用動産の場合>(全ての個人)

生活用の動産を譲渡した場合には、利益がでていても申告する必要はありません。

車の売買(下取りを含む)をした場合、人気車でプレミアムが付き儲かったとしても申告は不要です。(ただし、個人事業として事業用の車として使用している場合には、総合譲渡所得として申告が必要です。)

衣類など家庭用品をヤフー等のネットオークションなどで売買をし、儲かったとしても申告は不要です。(ただし、売買による利益を目的として、購入した商品を家庭用として使用せず、売買を行い継続的に儲けている場合には事業所得又は雑所得として申告が必要です。)

生活用動産の譲渡は申告する必要がないと記載しましたが、例外として貴金属、宝石などで1個が30万円を超えるものは申告が必要です。

 

<個人事業主が棚卸資産を譲渡した場合>

個人事業主が、棚卸資産を譲渡した場合には、事業所得として申告が必要です。

 

<個人事業主が事業用資産を譲渡した場合>

個人事業主が、事業用資産を譲渡した場合には、事業所得でなく総合譲渡所得で申告することになります。法人成り等をした場合などは、申告が漏れやすいので注意が必要です。

 

<株式の譲渡の場合>(個人事業者も含む全ての人)

株式の譲渡所得は、分離課税として申告が必要です。特定口座を利用している場合には、申告不要制度があります。特定口座の場合、確定申告したほうが良いかどうかは、ケースバイケースで判断が難しいです。

 

<国債の売買について>(個人事業者も含む全ての人)

償還前に国債を売買した場合における売却益は、平成27年までは、非課税でした。平成28年以降は、上場株式等と同様の取扱いになります。

 

<金の売買>

金の売買は、総合譲渡所得として申告が必要です。また、取引が200万円超の場合には、売買の取引が税務署に報告されるので、気を付ける必要があります。

※不動産の売買、金の売買は、売却損の場合は納税する税金がない為、申告が不要ですが、申告をしていないと税務署から売買についてのお尋ねがくることが多いので、売却損の場合も一応確定申告されることをお薦めします。

 

編集後記

 確定申告の制度は、複雑で譲渡一つをとってみても、いろいろな申告の仕方があります。

特に不動産の譲渡の場合には、金額も大きくなり、又特例等は申告が要件になっていることも多いので、税理士又は税務署に相談する事をお勧めします。

★あさぎり通信vol.24 相続税の節税について

 あさぎり会計事務所の税理士の山根です

さて、今回の内容は、相続税の話です

平成27年度より、相続税の基礎控除額が大幅に下がりその影響が出ています

弊所でも、改正前までは相続税無縁であったの申告のお手伝いをしましたし、

これからさらに増えて行くと予想されます。

 ただ、この新たに相続税がかかり始めた層の方は,ちょっとした工夫で相続税の申告が不要となります。

 その代表的な工夫は贈与ですが、その他の方法についても設例で話を進めて行きます。

 勿論、元々相続税の心配があった層の方にも有効な話です。

 

前提

 今更ですが、相続税は、一定の基礎控除額があり、財産から借金を差し引いた金額が、その基礎控除額を超えると相続税がかかります。

 逆に言うと、基礎控除額以下にしておけば相続税の心配は無くなるわけです。

 ちなみに、基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数ですよね。

 

では、前提条件を以下の様に設定して話を進めて行きます。

〇 家族構成:父・母・子2人で父が死亡し相続発生

〇 自宅不動産3,000万円(土地2,500万円・家屋500万円)

〇 預貯金3,000万円

 相続財産の合計6,000万円で確認してみましょう!

 

具体的方法

 何もしなかった場合には、相続税が120万円かかります。

 改正前までは、基礎控除額が8,000万円あったので、関係無かったのですが!!

 今回のケースでは、基礎控除額(4,800万円)を超えた1,200万に対して相続税が発生します。

 この、1,200万円を何とかすればいいのですが・・・・

具体的方法1

  毎年、贈与税の非課税範囲内で贈与する。

 贈与税は、貰う人1人当り年間110万円まで非課税です。

 一機に財産を減らそうと思えば、子供だけでなく、子供の配偶者や孫にも贈与すれば、1,200万円位なら2~3年で減らす事が可能です。

具体的方法2

 終身保険の生命保険に加入する。

死亡保険金の受取は、500万円×法定相続人の数までの金額が非課税です。

今回のケ-スでは、1,500万円までは非課税です。

預貯金1,500万円を生命保険に替えておけば問題解決です。

具体的方法3

 配偶者控除の特例を利用する。

 上記1.2の対策をしなかった場合には、配偶者控除の特例を利用し、配偶者が全ての財産を取得すれば相続税は発生しません。

1億6,000万円までの財産を配偶者が取得した場合には相続税がかかりません。

具体的方法4

 小規模宅地の特例を利用する。

 この特例は、一定の相続人が自宅を相続した場合には、敷地面積100坪までは、評価額から80%減額してくれるという特例です。 

 今回のケ-スでは、2,500万円の敷地の評価が80%減額(2,000万円)されて500万円の評価となり、相続税がかかりません。

ただし、上記3.4の特例は、相続税の申告が必要なので注意して下さい。

 以上から、まずは1の贈与2の生命保険の利用すれば、続税の心配は解消されるという事です。

 3.4の特例は、申告を伴うので、まずは、1.2を検討しましょう! 

 

編集後記

 今回の話はどうでしたか?

 当たり前じゃん、と思った方も居るかもしれませんが、未だ相続税は無縁と思っている方が多く、結局気づかないまま、知らないまま相続を迎え、相続税が発生するケ-スが多々あるんだと思います。

 知らぬが損、知っていればやる話なのでしょうが・・・・

 逆に、知っていて実行されていない方は、今すぐ実行しましょう!

 贈与・生命保険を利用すれば、相続税の申告自体が不要になるんですよ!!

 又、上記3.4の特例を利用すれば、相続税はかかりません。

 ただし、申告が複雑なので、税理士に頼む羽目となり、税金はかかりませんが、税理士報酬が何十万とかかり、税理士だけが儲かってしまいます(笑)

そこで!!

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★あさぎり通信vol.23 意外と知らない建物の減価償却費

 あさぎり会計事務所の税理士の藤田です

 今回の内容は、所得税についてです。

概要

賃貸建物を売却した場合において、売却時までの減価償却費を不動産所得の必要経費として計上するか、しないかによって所得税が変わります。

これだけの内容で、「ピン」ときた方は、所得税について相当詳しい方だと思います。
所得税法(49条)では、減価償却費は、その年12月31日において有する減価償却資産につき減価償却費として、不動産所得等の経費に算入することができる規定になっています。従って原則は、期中売却した建物の減価償却費(期首から売却日までの減価償却費 以下同じ)は、不動産所得の計算上必要経費には算入できません。

ただし例外で、基本通達(49-54)において、期中売却した建物の減価償却費は、不動産所得の経費に算入しても良いことになっています。

つまり、期中売却した建物の減価償却費は、不動産所得の計算上、計上するかしないかは選択ができるということです。

その前に、所得税は、総合課税の所得と分離課税の所得に分けて所得税を計算し最終的に合算して納付する税金です。

総合課税の所得は、事業所得、不動産所得、給与所得などを合算して所得税を計算します。この所得税の税率は、所得が高くなれば税率が高くなる仕組みになっています。

分離課税の所得は、株式の譲渡所得、不動産の譲渡所得などで、所得ごとに税率をかけて所得税を計算します。税率は、所得の大小に関係なく、要件によって一定に税率が決まっています。

ここで大事なのは、総合所得と分離課税の所得では、税率が違うということです。

減価償却費をどちらで計上するかによって、この総合所得と分離課税の所得が変わり税額も変わってしまいます。下記において、簡単な具体例で説明します。

具体例

なるべくわかりやすくするため、条件は、簡単に設定しています。収入と経費は、期中売却した建物の減価償却費のみで計算しています。

<前提条件>
不動産収入 2,000万円(総合課税)

期中売却した建物の期首帳簿価格(未償却残高) 3,000万円

期中売却した建物の減価償却費 500万円

建物譲渡価格 8,000万円(分離課税)

総合課税の税率55%(最高) 分離課税の税率20%(長期分離課税)

A 原則 不動産所得の計算上、売却時までの減価償却費を計上しない場合

1.総合課税2,000万円×55%=1,100万円

2.分離課税 {8,000万円-3,000万円}×20%=1,000万円

3.所得税 合計 1 + 2 = 2,100万円

B 特例 不動産所得の計算上、売却時までの減価償却費を計上する場合

1.総合課税(2,000万円-500万円)×55%=825万円

2.分離課税 {8,000万円-(3,000万円-500万円)}×20%=1,100万円

3.所得税 合計 1 + 2 = 1,925万円

C 差額

AとBの差額 175万円

今回のケースでは、期中売却した建物の減価償却費を不動産所得で計上したほうが得になります。

これは、総合課税の税率が55%>分離課税の税率20%で税率が分離課税よりも総合課税の方が高いためです。

期中売却した建物の減価償却費を不動産所得で計上したほうが良いかどうかは、その都度、判断が必要です。

注)短期譲渡所得の税率は、39%です。

編集後記

 所得税の計算は、総合課税と分離課税があり、所得の分類により税金が変わり非常に複雑です。今回のテーマは、わかりにくかったかもしれませんが、お伝えしたかったのは、

 税法って意外と落とし穴があったり、気づかないところで損したりするもんだなと感じて頂けたら良いかなと思います。