★あさぎり通信vol.47 新事業承継税制のデメリット

 おはようございます。
あさぎり会計事務所の税理士の藤田です。
 
 お盆休みは、いかがお過ごしでしたか???
暑い日が続きましたね。墓参りが大変でした。
 
 長いお盆休みも終わり、年末に向けて再スタートです。
あっというまに年末になるんでしょうね・・・
 
 
 さて、本日のテーマは、新事業承継税制のデメリットについてです。
 

制度の概要

 
 
 平成30年の税制改正により、事業承継税制が大幅に緩和され、利用しやすくなりました。
 
 この為、金融機関・保険会社・商工会などから
事業承継税制のセミナーなどを案内されることが多くなっています。
 
 私もいくつかのセミナーに参加させてもらいましたが、
制度の概要的な話やメリットばかり強調され、
まるで魔法の様な税制になったというような話が多く、デメリットの話等がなかったので、
今回のテーマにした次第です。
 
 
 改正の内容は、
今後5年以内に承継計画を提出し、10年以内に承継者に株式の贈与・相続させた場合には、
相続税・贈与税が100%猶予される、という制度です。
 
 税金が猶予されるというのは、払わなくて良いということではなく、
要件が該当している間は税金を支払うのを一旦ストップするということです。
 

事業承継税制のデメリット

 
 
 
1.税務署へ「継続届出書」を3年に1回提出
 
  
 大変なのが、
贈与税・相続税の納税猶予を受けている期間はずっと、
3年に1回継続届出書を提出しなければならないということです。
 
 提出を忘れると、本税に加えて納税猶予をされていた期間の利息を
税務署に支払わなければいけません。
 
 納税猶予期間が長期の場合には、利息が本税を上回る可能性があります。
 
 
 現状では、税務署からの案内がない為、
納税者又は税理士がこの届出書の管理をしなければなりません。
 事業承継税制の場合、納税猶予期間が長期間にわたることが想定されます。
その期間ずっと、3年ごとに忘れずにこの届出書を提出しないといけないのは非常に大変なことです。
 さらに税理士が指導して事業承継税制を行っている場合においては、
この届出書の提出を忘れると、税理士の賠償責任になります。
 
 このため、税理士報酬がこの管理代を含めて高額になることが想定されます。
税理士報酬を考慮すると損になるかもしれません。
 
 また、顧問税理士が高齢な場合や、一人で税理士事務所をされている場合などは、
将来、税理士事務所変更される場合があります。
 この場合、3年後ごとの届出書の管理をどうするのかという問題が残ります!!!
 
 
 
2.贈与の実行の年の翌年1月15日までに認定申請書の提出
 
 
 事業承継税制により、贈与を実行したとしても、
翌年1月15日までに認定申請書を提出しなければ納税猶予を受ける事ができません。
 
 税務上の確定申告、贈与税の申告は、翌年3月15日です。
が、この申請は、なんと1月15日までです。
 
 
 
3.事業承継税制で取得した相続人の株式の相続税対策がしにくくなる
 
 
 納税猶予期間中、事業承継税制の要件に該当しない株式の移転などは、
納税猶予の取り消しになります。
 
 事業承継税税制により先代から株式を取得した2代目が高齢になり、
2代目の生存中に3代目に株式移転を行う場合には、移転が事実上出来なくなります。
3代目に株式を移転する場合には、納税猶予された税額と利息の支払いが発生します。
 
 また、今回の改正の要件は期限付きなので、
2代目の生存中に行う株式移転対策の時には、従来の事業承継税制が適用されます。
8割の雇用継続要件などがあり要件が厳しいです。
 
 
 
4.相続税の計算の際に、対象株式を相続財産に加算
 
 
 事業承継税制により贈与した株式については、贈与した人の相続税の計算の際、
一旦加算して相続税を算出してから再度、納税猶予を受ける事になります。
 この為、他の相続人がどのくらい贈与したのかわかることになります。
 
 
 
5.遺留分対策
 
 
 事業承継税は争族対策、遺留分対策にはなっていません。
  
 事業承継対策を行うには、
民法特例、種類株式などの遺留分対策を含めた対策が必要です。
 
 
 
6.税制改正
 
 
 将来、どのような税制改正が行われるかわかりません。
ひょっとしたら、今より良い税制改正が行われたり、株式の評価の方法が変わるかもしれません。
 

編集後記

  
 
 今回の話はどうでしたか?
 
 今年の改正により事業承継税制が利用しやすくなっているイメージがありますが、
デメリットもたくさんあります。
 
 事業承継対策を行う場合には、目先の対策だけでなく、長期にわたる対策が必要です。
 
 新事業承継税制は、相続税対策として利用しやすくなったのは事実ですが、
メリット・デメリットを総合的に勘案して決定する必要があります。
 
 相続税対策には他の方法もありますので、選択肢の1つとして考えるのが良いかと思います。