★あさぎり通信VOL.202 相続における法務と税務の違い

あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

梅雨に入りジメジメな嫌な季節が来ました!

体調管理に留意しましょう。

さて本日のテーマですが「相続における法務と税務の違い」です。

相続の事案を処理する場合に、法務(民法)の考え方と税務(相続税)の考え方が違う場合があります。

一般的に、法務の問題は、弁護士や司法書士に、税務の問題は税理士に相談すると思います。

悪気はないのですが、弁護士や司法書士は税務の事が分からず、逆に、税理士は、法務の事が分からず回答し、結果的にミスリ-ドする場合があります。

尚、最近あった実際の話で、「遺留分を減らしたい」という相談を基に解説していきます。

相続における法務と税務の違い

● 養子について
相談内容は、相続人として長男次男の2人で遺言書を書いて長男にだけ財産を残したい。
次男には、1円もあげたくないという内容でした。

遺言書を書いても次男には遺留分(注)が1/4あります。
この遺留分を少しでも減らしていく話です。
(注)遺留分とは、一定の法定相続人に保障される最低限の遺産取得分です。

まず最初に考えたのが養子です。
長男の嫁と子供2人の3人を養子にする事にしました。

相談者から1人しかダメなのではないかと言われましたが、
税務上は、実子がいる場合には1人ですが、民法上は無限に可能です。
結局、養子を3人追加する事にしました。

これで、相続税も下がりますが、遺留分が1/4から一気に1/10に下がりました。

養子が1人しかダメなのは税務の話です。

● 教 育 費 に つ い て
次に被相続人の財産を減らす為に、孫(養子)に教育費(学費)の支払いを提案しました。

ここで弁護士から駄目だしが出ました。

税務上は、教育費などの生活費は贈与にならないので税理士の私としてはいいと思いましたが、民法上は特別受益に該当する可能性が高い為、遺留分の計算上は、遺産に持ち戻す必要があると指摘が入りました。

税務上は7年以内の贈与は相続財産に持ち戻す規定がありますが、そもそも贈与にならないので、当然、持ち戻しの必要はないと思っていました。

私は知りませんでしたが法務と税務の違いが出た部分です。

私1人で対応していたらミスリ-ドしていました!

最後に、預金を死亡保険金に振り替える(加入する)事を提案しました。

死亡保険金は、税務上、非課税金額(500万円×法定相続人の数
)以上は、相続税の対象となります。

一方、法務上は、極端な事をしない限り遺産から除外されます。

以上の提案で、遺留分は下記の金額となりました。

〇 対策前の遺留分
 1億円×1/4=2,500万円
〇 対策後の遺留分
 (1億-3,000万(死亡保険))×1/10=700万円

この他、長男と同居されているので生活費はなるべくお母様が支出する様にアドバイスしました。

流石に0円には出来ないですが随分と減り相談者は喜んでいました。

編集後記

今回のお話はどうでしたか?

1つの事案に対して各専門家に同時に話を聞くのが理想ですが、現実的には難しいと思います。

もし今後、相続問題が発生した場合には、法務と税務の違う部分があると言うことを認識しておいてください。

又、遺言書を作成する時に、弁護士や司法書士は税務の事を気にせず作成する事が多いです。
土地の分割方法によっては相続税が大きく変わることがあるので留意してください。

尚、弊所では1つの問題に対して複数の専門家で法務・税務をトータル的にサポ-トする様にしています。