★あさぎり通信VOL.142 退職金に関する税務の取扱い

あさぎり会計事務所の税理士の山根です。

初めに、本来は先週配信する予定でしたが1週遅れましてスイマセンでした。

単純に1週間勘違いしていました。

最近、経団連から転職時の「中途採用」という呼称を「経験者採用」に改めるという記事がありました。

同調圧力なのか体裁を整えるという意味なのかよく分かりませんが単なる言葉尻の問題だと思います!

昨今、ネットなどで直ぐに炎上してしまうから仕方ないのでしょかね?

こんな言葉尻だけ気にしていたら個性の無い世の中になるのが本当に心配です!

さて、本日のテーマですが、「経験者採用」に関連して「退職金に関する税務の取扱い」です。

退職金に関する税務の取扱い

● 制 度 の 概 要

退職金を貰った場合には、税金はかからないとか安いという話を耳にされた方も多いのではないでしょうか?

実際、退職金は、長年の勤労に対する報償的な意味あいや老後資金等の確保の観点から税金は優遇され安くなっています。

又、退職金は「分離課税」と言って給与などの他の所得と合算せず退職金だけで納税が完結します。

では次に、具体的に退職金の税金は計算方法は下記の通りです。

{(退職金-退職所得控除額(注)}×1/2×所得・住民税率

(注)退職所得控除額

〇 勤続年数20年以下=40万円×勤続年数

〇 勤続年数20年超=800万円+70万円×(勤続年数-20年)

以上の様に、貰った退職金から退職所得控除額を控除し、更にその金額が1/2になるので

給与や賞与で貰うより断然安くなります。

税率は最高でも27%位です。

● 実 務 上 の 留 意 点

上記で退職金の税務の原則的な取扱いを説明しましたが何点か留意点があります。

〇 勤続年数が5年以下の場合

退職金の税金が下記の様になります。

(退職金-退職所得控除額)×所得・住民税率

退職所得控除額の控除後の金額に1/2が出来なくなるのです。

イメ-ジ的には税金が倍近く変わってきます!

〇 前年以前4年以内に他に退職金を貰った場合

過去4年内に他の退職金がある場合は、「退職所得控除額」の金額の調整が必要となります。

過去に退職金を貰っている場合には、「勤続期間等の重複部分」があるため、

この「重複勤続期間部分」についての調整が必要となるのです。

具体的には、今回の退職金支払時に「退職所得控除額」から重複部分額をマイナスする事になります。

(具体例)
あさぎり太郎は、A社とB社に勤続していました。

A社を令和2年に退職:勤続期間(H10年~令和2年)

B社を令和4年に退職:勤続期間(H20年~令和4年)

この場合にB社の退職金を貰う以前4年以内にA社から退職金を貰っているの為、

B社の退職時に退職所得控除額の金額の調整が必要となります。

B社の退職所得の金額は下記の通りです。

=40万円×14年(勤続年数)=560万円

(2)重複期間(注)の退職所得控除額

=40万円×12年=480万円

(注)A社とB社の重複期間は、平成20年~令和2年で12年。

(3)B社での退職所得控除額

=(1)-(2)=80万円

(実務上、想定されるケース)

〇 同族会社など関連会を何社も経営されている方

〇 「小規模企業共済」に加入されている方

最低4年の間隔、ベストは1/2の減額が使えるので5年超の間隔で2社目以降の退職金を貰ったり

小規模企業共済を解約するといいでしょう。

この様に、解約時期の工夫で税金に大きな差が出ます。

尚、確定拠出年金(イデコ)を解約(受領)した場合には、上記の4年以内の期間が19年となります。

イデコの解約時には退職所得控除額は大幅に減額されますので退職前にイデコを解約をする方が現実的かもしれません。

編 集 後 記

今回の話はどうでしたか?

昔、退職金の税金については、天下り官僚達が、「渡り」を繰り返し、在職時の給料を抑え

退職金で受取り、退職所得を1/2する方法が横行していました。

これを防止する為に、5年以内に退職した場合には1/2が認められなくなったのです。

とは言え、退職金の税金は優遇されています。

ただし、退職金を複数回貰う場合には落とし穴もありますので気を付けて下さい。